私は走る人です。会社を辞める条件としてタバコを止め、ストレスのはけ口としてジョギングを始めたところ、「自分に向いているかも」と感じ、3年後にフルマラソンでサブフォーを達成しました。今もなお、自己ベストタイムを目指して、走り続けています。
BORN TO RUN 走るために生まれた~ウルトラランナーVS人類最強の”走る民族”
本書では、超長距離を走るタラウマラ族の住むメキシコの山奥で行われたトレイルレースを通じて、人間は地球上で最も長い時間、長距離を走ることに適した動物であることを解明していきます。
大企業を辞め、タバコをやめたことで、「走る」という素敵な趣味に出会えたことは、私の人生にとってラッキーだったと、本書を読んでつくづく感じました。走ることは素晴らしい!
走ることは人間の宿命
初期の人類が地面から拳を離して直立し、ほかの生物と袂を分かった理由を突き止めた者はこれまでいない。
それは呼吸をするためなのだ!
喉を開け、胸をふくらませ、地球上のどの生き物よりもうまく空気を吸うためだ。
via: P311
本書では、人間の体は走るように作られていると主張しています。多くの動物は走る際、足の一往復に対して一回までしか呼吸できません。足の動きが肺の動きと連動しているからです。それに対して、人間は1ピッチで複数回呼吸できる、地球上で唯一の動物なのです。
人間は、他の動物よりも、長い時間、長い距離を走ることができます。よくよく考えてみると、42.195kmや100kmといった、超長距離を走り抜けられる動物を私は知りません。アフリカのブッシュマンは、獲物を粘り強く追いかけ、最後はスタミナ切れのところを仕留めるのだそうです。
本書では多くの証拠が語られています。詳細は本書に譲ります。どれも説得力のあるもので、がぜん、走るモチベーションが上がってきます。
ランニングシューズの誤解
それは体重でもなければ、それまでの故障暦でもない。
シューズの価格である。95ドル以上のシューズを履いたランナーは、けがをする確率が40ドル未満のシューズのランナーの二倍だったのだ。
via: P246
ランニングシューズが過度に足を守ってしまい、本来の足の動きを阻害することが原因の怪我が多いそうです。高価なシューズほどケガ率が増加するという悪循環…。
トップランナー仕様のシューズは、ショック吸収材がほとんど使われていません。走り込んで、足が出来てきたら、トップランナー用の靴を履いてみるのは、ありかもしれません。
走ると歳をとらない
アメリカ合衆国のほぼ半分も年をとった男が、ビル50階ぶんの階段を上がってから、森の奥へ走り出したわけだ。
「人は年をとるから走るのをやめるのではない」とディーモンは言っていた。「走るのをやめるから年をとるのだ」
via: P289
長距離を走る能力は27歳でピークに達し、その後緩やかに低下していくとのことです。19歳時の能力まで低下する年齢は、なんと64歳!マラソン大会に出場すると、ご年配の方がかなり多く参加されていて、しかも若い人とそん色ない走りをしていることに驚きます。実は長距離走は年齢はあまり関係ないのです。
知り合いも50歳を過ぎてから走り始めて、フルマラソンはサブフォー、トライアスロンも毎年出場しています。体重は10kgほど減って、若い者には負けないと、若々しく生活しています。いくつ歳をとっても走ることは始められますし、地道にトレーニングをしていけば、若い人に追いつくことが可能なのです。
距離を伸ばしていくと、年齢だけでなく性別の差も無くなっていくそうです。遠い過去の人類の歴史は、女性も子供を生み、育てながら狩りをしたといいます。フルマラソンの世界記録の男女差は約12分しかありません。100km以上のウルトラマラソンだと、女性が総合優勝することもあるそうです。
体と心の健康
何十年も走り続けてもけがひとつせず・・・・・・毎週数百マイルをこなしながら毎回その走りを楽しめ・・・・・・心拍数は低く抑えられてストレスを怒りが解消され、なおかつ活力が高まるとしたら?
犯罪、高コレステロール、強欲がしだいに消えてなくなり、ついには走る民族の国としてそのストライドを再発見するところを想像してみたらいい。
via: P142
なにか落ち込むことがあっても、走ることで冷静になれます。怒りや妬みも不思議とおさまります。カロリーを適切に消費することで、糖尿病などの成人病にかかるリスクも低下します。
一日10km走ると、700kcalくらいを消費できます。好きなものを食べて飲んでも心配はいりません。人生において最もストレスとなる健康上の心配が払拭されるのです(もちろん、ある確率で発症する病気は防げません)。
走ることは辛いことではありません。長い距離を走るために進化したカラダを使って走ると、爽快感と喜びを感じます。だから多くの人が走っているのです。心から楽しめて、心身の健康も得られる趣味は、ジョギング以外には私は知りません。
人生暇つぶし
「ごく簡単なことです」と博士は言った。
「脚を動かせばいい。走るために生まれたと思わないとしたら、あなたは歴史を否定しているだけではすまない。あなたという人間を否定しているのです」
via: P350
個人的に「仕事が趣味」は危険だと思っています。体を動かす趣味は一つは持っておきたいです。ジョギングは、相手が要らないですし、靴さえあれば、どこでもできます。旅行や出張先でも走ることは可能です。
結局、人生とは「暇つぶし」だと思うのです。暇ほどの苦痛はありません。暇だから仕事をするのです。今の世の中、安く暮らそうと思えばいくらでも安く暮らせます。あとは、「いかに安く、楽しく暇をつぶせるか」です。
本書に登場する、トレイルに魅せられた人々の話を読むと、暇なら走ればいいじゃんと思えるようになります。昼寝をするくらいなら、ジョギングに出よう!
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本書の最後を飾る、メキシコ奥地で行われるレース「Copper Canyon Run and Ultra Marathon」は迫力満点です。その様子が、ビデオに残っています。
第一回目の大会で、タラウマラ族と死闘を演じたスコット・ジュレック
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