スポーツ選手は体を動かすことが仕事です。体を動かす命令を出すのは脳であり、脳を司るのが「心」です。心の状態が悪いと、上手く体を動かせません。
日本代表のキャプテンとして、そしてブンデスリーガー所属の選手として、世界の第一線で活躍している長谷部選手は、27歳にして、人生について達観している感があります。日頃から厳しい競争の中で考えていることは、一般の人より濃いものになるのでしょう。一つ一つの言葉に重みがありました。
心之芳庭29 / IMAGE | Pixel 觀景窗の視界
心を落ち着かせるために
「一日一回、深呼吸をして、必ず心を鎮める時間を作りなさい」
まさに当時の僕に必要な習慣だった。それから僕は、帰国してどんなに忙しいときにも、部屋でひとりになる時間を作り、スケジュールを詰め込みすぎないようにした。
心を落ち着かせることがプレーのパフォーマンスを最大限に発揮するためには不可欠だ、という長谷部選手の考えに、共感しました。感情のままに行動してしまうと、致命的な失敗につながりやすくなります。心は常にコントロール下に置いておきたいです。
長谷部選手は、合理的思考で処理できる部分は処理してしまい、残りの部分は一人の時間を大事に過ごして、平常心を保つことを心がけているようです。
我が家は家族四人で、1人になれる時間が限られています。朝のジョギング&シャワーの後と、子供達をお風呂に入れた後に、深呼吸や座禅をして一息入れるようにしています。短い時間でも心がスッキリします。
VYA_0699 / 独自又何妨
キャプテンとしてのコミュニケーション
自分の価値観と合わない人だと、人間はついつい悪いところばかり目についてしまうけれど、いいところを探して、とにかく一度、信頼してみる。
こっちが好意を持って話しかけたら、きっと好意を持ってくれると思う。逆に嫌いだと思っていたら、そのニュアンスは伝わってしまう。
サッカーの選手も監督も、一癖二癖ある人は多いはずで、時には感情的になってしまうことも多いでしょう。キャプテンは、監督、選手、スタッフ全員とコミュニケーションを取らなければなりません。
日本代表は大会ごとにメンバーが入れ替わるので、中には第一印象でウマが合わない選手も居るはずです。長谷部選手は、一度は信頼して近づいてみることで、印象の勘違いを無くすようにしているそうです。それでも腹が立つようであれば、距離を置けばよいのですから。
いくら自信を持ったからといっても、「上から目線」には気をつけなければならない。(中略)
ただ、だからといって、「下から目線」になってもダメだ。
相手に媚を売ったり、ゴマをすったり、下手に出るのは自分自身を貶めることになってしまう。
ヨイショすれば気に入ってもらえるはずだ、という目で見ていることでもあり、それは相手に対しても失礼だと思う。
コミュニケーションに欠かせないのが、「謙虚な姿勢」です。自分を出しすぎず、かつ自信を持って人に接することが大切です。基本は笑顔で、真剣な話をする時は、真摯な態度をとります。長谷部選手が大事にしている、心を落ち着かせ、ニュートラルな精神状態を維持することは、人付き合いでも有効です。
Write / spaceamoeba
発する言葉を大切にする
愚痴だけでなく、負の言葉はすべて、現状をとらえる力を鈍らせてしまい、自分で自分の心をみだしてしまう。心を正しく整えるためにも愚痴は必要ない。
「痛いけど、頑張ります」と答えるのは、「100%のプレーができないと思いますけど、許してくださいね」と言い逃れをしているようだ。
自分が発する言葉というのは、自分自身に語りかけているところがある。口にした言葉は自分の耳を通じて、自分の心に届く。
27歳にして、「言葉が持つ力の大きさ」に気づかれているところがすごいなと思います。同い年の頃の自分を省みれば、余裕のないアップアップの姿を思い出します^^
毎日が修羅場で激しい競争をしている長谷部選手は、人生経験の濃度が桁外れに違うのでしょう。トップ一線で活躍することで、人間性が飛躍的に成長するのだと思います。
「直にして礼なければ即ち絞す」
正義感が強すぎて、真面目すぎると、かえって周囲を絞めつけてしまう、という意味だ。いくら自分が正しいと思ってもそれを人に強要してしまったら誤解を招くこともある。人それぞれには価値観があって、絶対的な正解なんてない。何かを伝えるときはまず相手の気持ちも想像しなければならない。
以来、正論を振りかざしたら、かえってまわりに迷惑をかけてしまうことがあるということを肝に銘じている。
人間は、一人ひとり別の人生を歩んできています。見方も違うし意見が違うのは当然です。どの世界においても、自分の力を最大限に発揮するには、相手の意見を尊重しつつ、意見をすり合わせていく「コミュニケーション」の能力が不可欠です。
最後に、長谷部選手が判断をする時に心がけていることを引用して、本記事を〆させていただきます。
岐路に立ったときに、僕は何を大切にしているのか。
もちろん、まだこれだと自信を持って言えるものは見つかっておらず、今なお模索中だけれど、ひとつだけ意識していることがある。
それは「あえて難しいと思った方を選択する」ということだ。
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