e-book | e-reader / ceslava.com
ブロガーは今後、ソーシャルメディアとの共生を目指すことを、当ブログでは繰り返し提案してきました。では、その向こうに何があるのか?最終目的地はどこにあるのか?
ブロガーが目指すべきゴールの一つを、今回発見することが出来ました。それは何かというと…。
ズバリ、「電子書籍」による出版です。本書を読んで確信しました。
出版システムの疲弊
メディアでは、盛んに「これがカッコイイ」「これがオシャレ」といった感性的な情報が流され、みんながそれに振り回されまくった-それが記号消費のいが行き着くところまで行き着いた先、爛熟の1990年代に日本社会に起きた現象でした。
(中略)
そしてこのマス感性を起爆剤にして、90年代はメガヒットの時代になりました。ティラミス、ナタデココというデザートの大ブーム。レストランやカフェに行くとみんないっせいにティラミスを頼んでいたのですから、いま思うと不気味以外の何ものでもありません。
90年代までは、「みんながそうしているから、自分も」といった、右へ習え的な大量消費が主流でした。書籍についても、書籍の内容よりも「書籍を読んでいる自分」をアピールするための読書をしていました。マス的な手法でプロモーションをかけることで、大量の書籍を販売することができました。
従来のような「モノで自己実現する」「モノで自分を語る」といった思考が消滅してしまったのが、2000年代に起きた日本人の精神風景の大きな変化なのです。
2000年に入って「自分にあった書籍」を読む傾向にシフトしてきました。「ファッションとしての読書」は終焉を迎えたのです。人々の興味は細分化して、マス的にドカンと大量に売れる書籍はなくなってしまったのです。
多くの編集者はどこかで見たことがあるようなビジネス本や自己啓発本の量産を、まるで機械工場の労働者のような繰り返しています。こういう現状のどこに「文化」があるのでしょうか?
現在の出版業界は、多くの社員を抱えていて、マス的に大量に売れる書籍でないと、会社を維持できません。書籍の書き手も同様で、書籍の販売数が減ってしまった現在では、10%の印税では、生活は厳しいでしょう。
音楽業界でも同じようなことが起きています。CDは売れず、iTunesの登場によってネット経由で一曲ずつ低価格で購入できるようになりました。アーティストは曲の販売では大きな利益を得られないため、ドル箱である自分たちのライブに足を運んでもらうことに注力し始めています。
e-book reading with zaurus sl-c860 / torisan3500
電子書籍の可能性
アマゾンDTPで出版された本はアマチュアであってもプロの本であっても、並ぶ場所は同じように「キンドルストア」です。もちろんアマチュアでの本がキンドルストアのベストセラーランキングに入ることはめったにないでしょうが、すくなくとも扱いにおいてはプロとアマチュアの差はありません。
電子書籍であれば、誰でも簡単に出版できます。アメリカでは、テキスト原稿をアップロードすれば、自動的に体裁を整えた上で、他の有名書籍と同列でアマゾンショップで販売できる仕組みが、すでに出来上がっています。
自分で出版する「セルフパブリッシング」であれば、販売額の30%を手数料として支払って、70%を収入とできるのです。紙の書籍と比べて、一冊につき7倍もの利益を得ることができます。これはどの作家さんも飛びつくのではないでしょうか?
問題は電子書籍をどのようにしてプロモーションしていくかです。従来であれば、出版社が広告費をかけてメディア上でプロモーションをかけていましたが、セルフパブリッシングだとそうはいきません。
Social Media Democracy / Intersection Consulting
電子書籍とソーシャルメディアの親和性
実はプロモーションについては、すでに答えは出ています。私は年間100冊くらい本を買う人で、その半分以上は、お気に入りの書評ブログの記事や、ツイッター、フェイスブックなど、ネット上で紹介されていた本を購入しています。ブログの書評を読めば、書籍の内容、文脈(コンテキスト)を理解することができます。本屋で実際に書籍を手にとって読まなくても、自分の興味にあった本に出会えるようになりました。
食べログでは、自分と舌が似ているお気に入りのレビュアーを見つけることができれば、その人の評価の方がミシュランよりも自分にとっては正しいということになるのではないでしょうか
私の妻は、クックパッドのレシピで、料理を作っています。レシピを選ぶ際に参考にするのは、「誰のレシピか」だそうです。自分の味の好みに合ったレシピ作者を見つけることができれば、まずハズレはないそうです。私も書籍を買う際に、同じようなことをしています。私にも書籍の趣味が合うお気に入りのブログやメディアがいくつかあるのです。
ソーシャル時代において「ブログ」の重要性がさらに増す理由において、ブログがソーシャルメディアに寄生して、息を吹き返しているという話をさせていただきました。
ネタにされやすい記事をソーシャルストリームに投下すると、うまく臨界点を超えた記事は、核爆発のようなアクセスを集めることができます。ソーシャルグラフが水道管で、パイプを流れる水をブログ記事に例えるとわかりやすいと思います。水を流し始めると、パイプラインを伝って各家庭に一気に拡散するイメージです。
これからは「ソーシャルブロガー」の時代です。間違いない!
via: 好きなことを書け、とにかく続けろ
ソーシャル・ストリーム上に電子書籍の情報を上手く投下できれば、個人でも電子書籍を出版・販売することは十分可能だと思います。これが出来るのは、ソーシャル・メディアを上手く利用できるブロガー、つまり「ソーシャルブロガー」に他なりません。私が冒頭で「ブロガーが目指すべきゴールは『電子書籍』による出版だ」と述べた理由はここにあります。
登場人物が出揃ったところで書き手はいったん連載をストップし、掲示板で読者たちにこう呼びかけたそうです。「みなさん、どの男性を主人公と成就させたいですか?」
どうやってアンケートを採って、その結果を反映させてこの書き手は小説の後半を書きつないだといいます。
なぜケータイ小説が人気があるかというと、ソーシャルメディアを利用して、徹底的に読者のニーズを反映しているからだそうです。小説を連載していく途中で、作者が掲示板上で読者と交流して、意見を吸い上げて、小説の続きに反映させるようなことが、実際に行われています。
Social Media Week Milano :: Il Festival della rete / br1dotcom
新しい書籍市場の姿
書籍化を見据えてブログを更新して、読者から色々なコメントをもらいながら文章をブラッシュアップしていく「ケータイ小説」的な執筆方法が、今後主流になっていくような気がします。書き手と読み手の間に「共通の場」が生まれるという、これまでは無かった書籍の形が見えてきました。
セルフパブリッシングで話題になった電子書籍を、大手出版社がこれまでどおりにマス的な紙の書籍として再販すれば、電子書籍と紙の書籍の共存も可能です。
iPadやキンドルのような電子書籍デバイスが今後どれだけ進歩しても、紙に印刷された文章の読みやすさを超えることはないと私は思ってます。ロングテールの頭の部分を大手出版社が紙の書籍として扱って、尾っぽの部分は電子書籍が担当するようなマーケットになっていくのではないかと、勝手に想像しています。
最も大切なのは、
「読者と優秀な書き手にとっての最良の読者空間を作ること」
です。決して出版業界の給料を高止まりさせたり、雇用を維持することを目的としてはならないです。