池井戸潤さんの新作「俺たちの箱根駅伝」を読みました。箱根駅伝ファンなので、駅伝モノには目がないのです。
ストーリーは、予選会で敗退したチームからの代表ランナーで結成される学生連合チームの活躍を追うもので、箱根駅伝小説としては、以前にも扱われたテーマではあるのですが、本小説では、レースを放映するテレビ局の舞台裏のストーリーも並行して進んでいく構造になっていて、多重的な内容になっています。
学生連合チームは全てのランナーにチャンスを与える
そもそも「学生連合チーム」は必要なのか? この議論は、以前から関東学生連合でも度々行われているようです。
同じ学校ではない選手が集まって走ることに、果たして意味があるのか? 毎日同じ釜の飯を食べて、結束力の強いチームが走ることこそが、走りの原動力となり、ドラマも生まれるのではという意見は、ごもっともだと思います。
しかし、誰もが強いチームに入れるわけではありません。経済的な理由で、国立大にしか進学できないランナーもいるでしょう。
学生連合チームは、箱根駅伝予選会で上位に入賞すれば、選手として選ばれる可能性があります。つまり、学生連合チームが存在すれば「出場ランナー全員に、箱根路を走れるチャンスがある」ということです。
2024年の大会では、出場チームを全国に拡大し、予選通過チームを13チームに増やした影響で、学生連合チームは編成されませんでした。
本来の趣旨としては、2024年も学生連合チームを編成してほしかったです。全国の全ての大学生ランナーにチャンスを与えてほしかった。
映画化やドラマ化を見据えたストーリー
今回のストーリーは、箱根駅伝チームと、テレビ局の舞台裏を交互に場面が切り替わっていく進行となっています。
箱根駅伝のテレビ局の舞台裏は、これまでフォーカスされてこなかった部分です。テレビ局にも色々思惑があります。色々横槍が入る中で、学生ランナー達のひたむきな走りを伝えていく現場を通じて、箱根駅伝の魅力を伝えています。
この多重的なストーリー進行や、サプライズ的な演出は、映画化やドラマ化を見据えているのでは?と感じました。
箱根駅伝を小説で楽しもう
箱根駅伝は、毎年一回。お正月にしか開催されません。ファンは、毎年首を長くして楽しみにしています。
しかし、この小説を読めば、お正月にしか行われない箱根駅伝を、いつでも楽しむことができます。臨場感は、実際のレースと変わりません。
箱根駅伝ファンには、ぜひ読んでもらいたい作品です。本番のレースと同じように楽しめると思います。
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