現代社会で生活していくには、必ずお金を使います。人生の転機では、マイホームや自家用車など、高額な出費をする必要があります。その際に、ただ漠然とお金を支払うのではなく、会計的な知識を持っておくと、より正しい判断ができるようになります。
簿記の詳しい勉強をしなくても、会計の大まかな考え方だけを知っておくだけでも違うでしょう。本書を読んで素人なりに考えたことを、ポイントを絞って紹介します。
会社の生命線はキャッシュ
企業が倒産する理由はたったひとつ。それは「現金(キャッシュ)がなくなったときだけ」です。
赤字がいくら多額になっても、現金さえ持っていれば、絶対に倒産しませんし、逆にいくら黒字があっても、現金がなければ倒産(黒字倒産)するわけです。
via: P92
商売の場合、仕入れの多い業種は、仕入れでキャッシュが損なわれます。支払いは納品の後になります。手形決済だと入金は数ヶ月後です。よって、いくら売り上げが伸びても、一向にお金が入ってこないのです。その間の運転資金は金融機関から借り入れたり、自腹を切るしかありません。
仕入れが少なく、現金決済の商売は倒産しにくいと言えます。しかし、ローリスクな商売はローリターンであるのも事実です。無駄なリスクをとる必要はありません。まずはローリスクで始めて、得たキャッシュを再投資してビジネスの規模を大きくしていくのが良いと思います。
無借金経営が良い訳ではない
無借金経営と聞くと、健全な感じで聞こえは良いですが、経営的には決して良い訳ではありません。低金利時代で2%で借り入れしても、税金を損金に落とせる分を考えた実質な金利は1.2%。1,000万円の借り入れをして、たった12万円以上の利益が出れば。借りた方がお得なのです。
支店を増やしたり、設備投資をすれば売り上げも利益も伸びるビジネスモデルであれば、積極的に借り入れをしたほうが、効率よく利益を延ばせるのです。
フローとストック
企業の収益をフローとストックに分けて考えると、安定度を計ることができます。ストックとは会員費のような、毎月一定して入る固定収入で、フローとは月々によって変化する流動的な収入です。ストックを増やすことができれば、経営は安定します。
例えばネット起業は広告収入(アドセンスやアフィリなどは変動が大きい)に頼る部分が多く、ほとんどがフロー収益です。サービスの一部を会員制にして会費のようなストック収益を得ることができれば、経営が安定します。
しかし、ネットの場合は利用者を広げていく方が結果的に大きな利益につながりやすい面もあります。囲い込みはせずに、いけるところまで拡大路線で行くほうが良いと思っています。
マイホームは買うべきか
借金の本質は会計学的には、「時間を買う」ことだそうです。20年かけて貯金をしなくても、借金をすれば、広いマイホームにすぐに住み始めることが可能です。
しかし、家族構成によって、必要な家の間取りは変わってきます。二人の子供が中高生になれば、各々の部屋が欲しいでしょうから、部屋の数はたくさん欲しいです。しかし、成人して独立してしまえば、大きな家は夫婦二人で住むには広過ぎます。
大きな借金を抱えた状態で、勤め先からリストラされてしまう可能性もあります。人口の減少で地価は下がっていて、引きずられて賃貸物件の家賃も下がっています。慌てて購入する必要はないと思います。
ある程度の規模の企業に勤めているのであれば、課長さん以上の役職、つまり管理職として経営側に就いてからローンを組むようにしましょう。普通の企業であれば課長になればリストラされることはありません。
【追記】それか、若いうちからローンを組んで、出世の境目の40歳ぐらいまでに、支払いの大半を進めておくのが吉かと。これからの時代、課長になれなかった人材はみんなリストラ候補です。
IT企業は儲かるか?
ITでの起業は先行投資がかからないので、ローリスクな起業と言えます。そのかわり、参入障壁が低く、競争が激化しているため、ローリターンです。
よって、会社を作って多くの人を雇ってという形態というより、個人ビジネスを目指すべきです。ITを駆使して徹底的に自動化、効率化すれば、一家4人くらいは十分養えるでしょう。
損は早めに確定する
ある会社がバブル期に土地を買いました。買ったときの値段は10億円でした。しかし現在は、売ろうと思っても時価が2億円程度に下がっています。
(中略)
法人の実効税率が40%だとすると、簿価10億円の土地を実際に2億円で売却すると、8億円の売却損が確定します。
会社の利益が8億円以上あれば、8億円×40%=3.2億円の税金が減ります。ということは、
2億円(土地を売って得たお金)+3.2億円(土地を売って減った税金)=5.2億円
のキャッシュを生み出したのと同じことになるのです。
via: P158
土地の値段が10億円から2億円に値下がりした場合、会計上は△8億円の減損処理が認められますが、税金は10億円のときのままなのだそうです。よって、会社に利益が出ているうちに売却して、損を確定させた方が、税金が減る分を考慮すると、5億円以上のキャッシュを生み出すのと同じ効果があります。
株などでも、塩漬けにするよりは損益を確定させて、もっと可能性のある投資先へ資金を振り向けた方が、効率が良いと言えます。株投資の損金は3年間繰り越しできるため、将来利益の出た投資の税金を減らして、得られるキャッシュを増やすことが可能です。
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本書は出版社から献本して頂きました。ありがとうございます。
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