2016年後半に発覚したキュレーションサイト問題。多くの人が「検索エンジンは絶対ではない」ことを、身にしみて感じたと思います。
しかしこの一件は、キュレーションサイトの暴走や、Googleの性能不備だけに原因があるわけではありません。我々一人一人の情報に対する姿勢に大きな欠陥があったことが、一番の原因であるとも考えられるのです。
検索エンジンの最大の敵は、我々人間そのものです。
最後の使徒
GoogleがRankBrain、つまり人工知能を検索ランキングアルゴリズムの中心としてから、それなりの年月が経っているはずです。
ハイパーグラフの捏造にはペンギンアップデートを。ワードサラダによる低品質ページにはパンダアップデートと、ネットの闇から次々と出現する難敵に、Googleは新兵器により対策してきました。
RankBrainの導入により、検索エンジンは人々の検索行動を分析して、ランキングを計算するようになりました。人々の行動そのものをランキングに反映するため、検索ランキングの精度向上は明らかに見えました。検索エンジンの未来は明るいと多くの人が信じたでしょう。
しかし、最後の最後で現れた強敵は、これまでの敵とはまったく異なるタイプでした。
最後の敵とは、我々自身そのものでした。
人間でした。ヒトでした。
キュレーションサイト騒動
大手ネット企業DeNAが運営するキュレーションサイトWELQは、健康や医療関連のキーワードで、検索ランキングにおいて軒並み上位を独占しました。
それだけなら特に問題はないのですが、上位表示された記事の内容がひどかった。
人々の生活や人生において重要な情報である健康、医療関連の記事を、専門知識を持っていないライターが、既にネット上で公開されている記事をつなぎ合わせてリライトして書いた記事だったのです。
Googleは文字数の多い記事を上位表示する傾向にあります。おそらく、Googleはページの滞在時間を監視していて、滞在時間が長いページを評価するアルゴリズムを持っています。そこを逆手に突いて、「一記事5,000文字以上」というように、内容はともかく、ボリュームが大きい記事を、クラウドソーシングを利用して安価で大量に作らせたのです。
ネット上の記事をクローラーで集めてきて、プログラム的にランダムにつなぎ合わせて文章を作る手法は「ワードサラダ」と呼ばれて、一時期検索ランキングを荒らしたことがあります。Googleはパンダアップデートで駆逐しました。
しかし、今回の手法は、プログラムではなく、人力を利用してワードサラダを作る方法です。良く読めばおかしなところあるのですが、Googleは見破れませんでした。
検索順位はあなた方そのもの
今回の騒動について、Googleから特別な見解のようなものは出ていません。(私の知っている限りでは) これだけポンコツ扱いされても、ブレない姿勢を持つところがGoogleの会社としてのすごいところです。
2016年6月23日、イギリスは国民投票によって、EU脱退を決定しました。しかしその後、国民からは多くの後悔の声が上がったということです。
「EU脱退なんて、よく考えたら無理だ」
しかし、決めてしまったものはしかたがありません。イギリスはEU脱退に向けて手続きを進めていくことになります。
もしかしたら、Googleも同じようなことを言いたいのかもしれません。
GoogleはRankBrainを利用して、人々の検索行動を学習して、検索順位を決めています。あなた方が品質が低いと言っている記事は、そもそもあなた方の多くが何も疑わずに信用して読んでいるということの裏返しなのです。
あなた方が好んで読んでいるから、上位に上がってしまうのです。検索順位はあなた方「人間」そのものなのです。と、Googleは言いたいのではないでしょうか?
検索エンジンにとって最後の敵は、「人々の無知」だったのです
Googleは人間とともに進化する
しかし、今回のように人々が自ら、「これはおかしい」と自浄することは良い方向です。今回の一件で、検索上位にあるからといって内容が信用できるとは限らないと、多くの人が意識しました。
人の脳は情報分析力は高いです。我々の情報リテラシーが向上すれば、専門外のライターが複数の記事を寄せ集めてリライトした記事を「胡散臭い」と敬遠するようになります。人々の検索行動が変化すれば、Googleの検索ランキングはより精度が高くなります。
2017年は、ネットを利用する一人ひとりが、情報を吟味する時代の幕開けです。検索エンジンに頼り切っていては、競争に勝てません。
検索エンジンを良きサポートとして、最良の行動を自分自身の価値観の元で決めていくことで、周りより一歩先に立てて、競争を勝ち抜けるのです。
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