知り合いの営業マンの方から「この本はいいよ!」と、ご紹介いただいた本です。
プロフェッショナルセールスマン ― 「伝説の営業」と呼ばれた男の壮絶顧客志向
JTB、リクルート、プルデンシャル生命と渡り歩いた、伝説の営業マン「甲州賢」さん。2009年に42歳という若さで急逝された後も、数々の武勇伝は今も語り継がれています。
武勇伝の数々
- 翌朝のアポのために大阪からタクシーで東京に戻る
- 商談中のお腹を下さないように、天丼は衣をとってから食べる
- 面接の結果を聞く前に、元の会社に退職届をだす
- 法人営業のためにゴルフを始め、毎晩1000球打ち続ける
- いつも換えのスーツやシャツ、靴を入れた大きなスーツケースを持って、営業回りをしている
などなど…。甲州さんは徹底した営業活動を実践していました。
本書の表紙は甲州さんのシルエットですね。大きなスーツケースを持っています。
仕事の本質
生命保険に入っていただいたあとに「なぜ、ご契約していただけましたか」とご質問をして「お得だったから」という言葉がお客さまから返ってきたら、もう負けだよ。
「甲州さんだったから」とか「安心してお任せできるから」という言葉が出たならば合格。
それがいい商談ができたかどうかを判断するバロメーターのひとつなんだ。
営業に限らず、すべての「仕事」の目的は、仕事を介して「自分を売り込む」ことに尽きます。信用を積み上げて、次の仕事のチャンスを増やして、スパイラルを回していけるかどうかです。信用が蓄積されない方法で仕事を続けて、同じところをずっと回り続けるだけでは、しんどいはずです。
いまも生命保険を売っているつもりではないんです。セールスという仕事は、お客さまのために解決策を提案することですから
商品を売ることを目的にしてはいけません。商品の販売を通じて「信用」を蓄積しているのです。利益はお金ではなくて「信用」です。お金は貰ったらそれで終わりですが、信用は継続した収益をもたらしてくれます。
売れた売れないということで一喜一憂しない。セールスでお伝えした話に顧客が共感してくれたのなら、それでよし。その先どうするか、結果は顧客自身が決めることなのだ。こちらでコントロールできないことを考えても仕方がない。
相手が居る以上、こちらでは制御できない要因があります。すべて契約を取ろうとガツガツしていると、逆にお客さんに不信感を植え付けてしまいます。「万事を尽くして天命を待つ」の言葉どおり、プロセスマネジメントに徹した仕事をすべきです。でないと、精神的にキツイです。
クロージングはすぐすること。いま、意思決定を求めること。なぜなら、相手にとっていい提案だから。本当に「フォー・ユー」の気持ちがさればできるはず。
最終判断は、結局お客さんがすることです。営業マンが迷えば、お客さんも迷ってしまいます。営業マンの仕事とは、お客さんの代わりに考えてあげることです。現時点でベストな提案を、自信をもってお勧めできることが大切です。
Germination / onigiri-kun
成長
あの頃の生活をもういちど繰り返せと言われたら、たとえ一億円もらったとしても断ります。そのくらい、コワい毎日でした。もう二度とできません。
甲州さんのようなスーパーな営業マンでも、修行時代の苦労は二度としたくないようです。営業とは、その場限りの販売とはちがって、信用や人脈を蓄積する職業とも言えます。最初は大変で、ゼロから立ち上げるときが、最もエネルギーが必要です。蓄積が進むことで、仕事がスムーズに回るようになります。「蓄積」する意識は、営業に限らず、すべての職業で意識すべきことです。
会いたい人が集まる場所へ身をおくようにする。セールスパーソンらしくない、非日常の予定を入れ続ける。持ち物をがらりと変えてみる。
甲州は後輩たちに言った。
「自分が変わらなければ、マーケットは変わらないぞ」
服装や持ち物を変えると、自分の意識が変わるとともに、周りの見る目が変わってきます。ランクの高いメンバーの会へお誘いがかかったりします。自分を変えることで、周りを変えていけるのです。
「念じてもうまくいかないのですが、どうしたらいいでしょうか?」
甲州はこう答えた
「それは、まだまだ、念じかたが足りないな」
人は、自分でイメージできないものになることはできません。成功したければ、成功した具体的なイメージを思い浮かべられるまで、徹底的にイメージすることです。成功とは、天から勝手に降ってくるものではなくて、自らが望んで、努力して掴み取るものです。
Honesty / Aardvark of Fnord
誠実
甲州に対して抱いていた天才的なイメージは誤解であったと知ることになる。
魔法のようなセールストークや決め台詞を華やかに操るのではなく、万全なシナリオづくりという実直な作業こそが、甲州のセールスを支えているのだと。
営業というと、華麗な話術を駆使して、お客さんを丸め込むようなイメージがあります。実際の現場では、正確な手続きと実直な態度が決め手となります。お客さんにストレスを感じさせずに、スムーズに進めることが大切です。
「本当はAのプランがお客様のニーズに最適なのに、自分の報酬が高くなるからBのほうを提案しようとか、そういう気持ちで生命保険を販売するようになったら、危ないから辞めようと決めたんです。
それはもう、ライフプランナーとしてグレてますから」
自分の私利私欲のために商品を販売してしまうと、他にも良い商品があったことをお客さんが知ってしまったら、信用はゼロになってしまいます。営業マンは常に真摯で、誠実でいなくてはいけません。営業マンとしての根本的な資質に関わるところです。
「顧客を見れば、担当セールスマンがわかる。顧客はセールスマンの鏡である」という甲州さんの言葉が思い出されます。
お会いした皆さん一人一人が、まさに甲州さんの鏡でした。
誠実な営業マンの周りには、誠実な人が集まります。お客さん同士を紹介することで、営業マンを中心としたコミュニティは強い信用で結ばれます。コミュニティを通じて、各方面から相談や依頼がくるようになれば、仕事が一段と楽しくなるでしょう。人に頼られるということは幸せなことです。
どの商売にも言えることですが、「誠実なお付き合い」こそがすべてです。甲州さんに関する数々の伝説は、誠実なお付き合いを徹底的に突き詰めた結果なのです。
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