コンサルタント…。独立してコンサルタントをしたいと思ってる方は多いと思います。その一方で、コンサルティングの仕事の実態を知っている人は多くないと思います。
最近お知り合いになったコンサルタントの方に「コンサルティングをやってみたいのですが、どう思いますか?」と聞いたら、「絶対にやめたほうがいい」という答えが返ってきました。もっとコンサルタントの業務を知りたいと思い、本書を読んでみました。知り合いの助言は間違いではありませんでした。
なぜなら、コンサルティングとは、激務の連続だからです。
The Consultant’s Desk / Balaji Dutt
コンサルティングはなぜ必要か
コンサルティングというと、専門知識を持っている人が、企業などを回って、逐次アドバイスをするようなイメージで、なんとなく楽な仕事のように思われがちです。もちろん、そういった形のコンサルタントも居るのかもしれませんが、本来のコンサルティングとは、企業の長期計画や、新規事業計画を、徹底的な調査と思考したうえで立案するのが仕事です。
長期計画でいえば5年に一回、半年の時間をかけて戦略を造る。そのための要員を常時抱えていると、残りの四年半は何も仕事がなくても遊ばせておくことになる。
残念ながら、経営戦略というのものは、戦略立案の経験が1、2回しかない素人にできるほど簡単なものではないし、何よりも専門的な技がいる。
企業の社員が長期戦略を立ててもよいのですが、企業文化のしがらみや、過去の成功体験にとらわれてしまったりと、斬新なアイデアが出てきづらいのです。
経営戦略の立案は経験が必要で、同じ企業内に居たのでは5年に一度しか経験できないのに対して、年に何回も戦略の立案をするコンサルティング会社にお願いしたほうが、先入観にとらわれず、精度の高い戦略を立案することが可能になるのです。
野球の世界で言えば、2010年のシーズンで日本シリーズを制したロッテの金森栄治バッティングコーチの存在がその典型だろう。金森コーチは、現役時代は決してスター選手だったわけではない。
打率三割こそ何度も達成しているが、約15年の選手生活で安打数は600弱に過ぎない。だが、金森コーチの独特だが理にかなったバッティング理論が実を結び、ロッテのリーム打率はパリーグトップの2割7分5厘を記録し、日本一への大きな原動力となった。
コンサルティングに対して「よそ者に何がわかる」と感じる方は、スポーツの選手とコーチの関係に例えるとわかりやすいです。タイガーウッズのコーチがタイガーより上手いわけではありません。石川遼君のコーチはサラリーマンのお父さんです。コーチに必要なのは、理論や技術よりも、悪いフォームとよいフォームを見極める観察力です。
コーチだけですべてが良くなるわけではない。どれだけ優秀なコーチであっても、才能のない選手を一流に育て上げることはできない。才能のある選手がいて、優秀なコーチと二人三脚で取り組んで、初めて一つのものが生まれてくる。コンサルタントと企業の関係も同じことだ。
どんなスポーツでも、コーチをつけない有名スポーツ選手はほとんど居ません。企業も同じで、外部からコーチしてもらう必要があるのです。企業専門のコーチングが、コンサルティングの存在する意義なのです。
Business goal / the Italian voice
コンサルティングの仕事とは
コンサルティングの仕事の本質とは、「何が問題かを突き止め、その答えを考える」ということ。つまり、「知っていることを教える」のではなく、「考える」ことこそがこの仕事の価値なのである。
コンサルティングの仕事の内容は、クライアントごとに違っていて、完全にオーダーメイドとなっています。企業の中に入って、色々な人に話しを聞いたり、データを調査して、将来の企業の取るべき戦略を徹底的に考えることが、コンサルティングの仕事になります。
コンサルタントにとって、「論理」の重要性はここまで何度か述べてきたとおりだが、この論理は、絶対的な「事実」にもとづいていなければならない。事実なき論理は机上の空論である。人を動かすときに何よりも強いもの、それこそが「事実」である。だから、我々コンサルタントは、この事実を集めるための努力は惜しまない。
これと対極的なやり方として、「哲学」で相手を納得しようとする人がいる。「こうあるべきなのです」「こうでなくてはならないのです」といったセリフである。だが、これは、コンサルタントが最も避けるべきやり方だ。
どんな人にも納得させる唯一の方法は、論理的な説明をすることです。事実を前提して論理的に積み上げていけば、誰でも納得せざるを得ません。中小企業や零細企業であれば、多少の思いつきで突っ走ってしまっても良いかもしれませんが、社員が何千、何万といる大企業では、思いつきで動くにはリスクが大きすぎます。
コンサルタントがより所とすべきは、あくまで事実だけだ。事実にもとづいて論理によって物事を落とし込んでいくのが、コンサルタントに最も求められていることだ。
もちろん最初は思いつきでも構わないと思います。事実を積み上げていくだけでは、斬新なアイデアは生まれませんので。コンサルティグは何においても、事実が基本。新規ビジネスの立案でも、思いつきの計画についても、関連する事実を徹底的に集めた上で戦略を構築していくのです。
Andrew Osborne School / AdmissionsQuest
コンサルティングのスキル
限られた時間内で最大限の情報を引き出すために必要なことは何か。それは何よりも事前準備である。具体的には、「何が問題か」という「仮説」を立てておくことだ。
「おたくの会社が今厳しい状態である理由はなんだと思いますか?」
などという漠然とした質問で、本質的な答えを引き出すことなど不可能だ。別に正しくなかろうと構わないので、まずは仮説を立てておく。
コンサルティングに必要なのは、第一に事実を元にした切れ味のよい論理力であることは、ご承知いただけたと思います。闇雲に事実を集めても、ピントがずれていては意味がありません。事前準備の段階で、仮説をたてておいて、仮説が正しいかどうかを調べるための事実を集めていきます。
もし事実が仮説に合わなければ、仮説が間違っていることが分かるので、その都度修正をしていけばよいのです。仮説がないと、地図と磁石を持たずに見知らぬ土地を歩くようなものです。
「コンサルタントの仕事を一言でいうと何だ?」と聞かれたら、私は「グラフを書くこと」とでも答えるだろう。それほど、グラフというものはコンサルタントにとって重要だし、人や会社を動かす力のあるものだ。膨大なデータの羅列や長時間の演説など不要。真のコンサルタントは、グラフ一つで相手を納得させる。
物事をわかりやすく説明するには、図表を見せて視覚的に訴えるのが効果的です。ブログでもダラダラ文章を書くより、美味しいメニューの写真を一枚載せたほうがより伝わります。コンサルティングの仕事とは、その企業が将来歩むべき道を、膨大なデータから本質的なデータを炙り出して、必要数のグラフに落とし込むことだと言えます。
Brussels Airport / hsivonen
コンサルタントの報酬
コンサルタントの時間単価はどのように決まるのか?
これも実にシンプルだ。コンサルタントの年収を「年間労働時間」で割ればよい。コンサルティングファームの「年間労働時間」の数え方は多少変わっていて、「一日8時間×週5日×年52週」の掛け算んで、2080時間と決められている。
私も将来的にはウェブコンサル的な業務をしていきたいと考えていて、でもコンサル料ってどうやって決めれば良いのかなという、素朴な疑問がありました。結局のところ、欲しい金額をもとに逆算すればよいってことですね。
マルチプライヤーが三倍を切ると、一流の弁護士事務所やコンサルティングファームは維持ができなくなると言われている。公認会計士の場合は、2.5倍が損益分岐点と言われている。
もちろん、経費も上乗せすることができます。上記の報酬にマルチプライヤーという係数をかけた金額が、請求額になります。ウチのような零細業者であれば、経費を押さえることができるので、まずは価格で勝負するという手もありそうです。
Olma fail. / nggalai
コンサルティングの苦しみと「やりがい」
考えることが仕事だ、などというと、いかにも気楽な仕事だと思う人もいるかもしれないが、とんでもない。はっきり言って、コンサルタントの仕事は他のどんな仕事よりもハードだ。後で触れるが、数年の仕事でバーンアウト(燃え尽き症候群)してしまう人が続出するくらいの激務である。
ひとたびコンサルティング業務に入ってしまうと、いつもずっと顧客のことを気にかけていないといけないってことです。効果がなければ、契約を切られてしまうので、出し惜しみをせずに、思いついたらどんどんアイデアを出していく必要があります。
その理由の一つとして、「考えることには終わりがない」ということがある。「唯一絶対の答えがない」ということは、いくらでも考えを突き詰める余地があるということだ。だから終わりがない。しかも考えるということはいつでも、どこでもできるから、会社をでたら「はい終わり」というわけにはいかない。帰りの電車の中でも、風呂の中でも、一日中仕事のことを考え続けてしまう。
コンサルティングとは、常に仕事を抱えている状態になるので、気が休まるときがありません。次から次へと新しい知識を吸収したり、考えたりしなければいけないので大変だと、知り合いのコンサルタントの方も言っていました。
会社から言われずとも、多くの人は自分の実力を冷静に捉え、自ら会社を去っていく。これをこの世界ではアップ・オア・アウト(up or out)という。感覚的には、三年で半分、七年で七人のうち六人がこの世界から去っていく。それほど厳しい世界である。
本書はドリーム・インキュベーター(DI)という日本でも最大手のコンサルティング会社の場合を例としてあげています。一般のコンサル会社は3年で辞めるようなことはないと思います。誰でも参入できる業務形態なので、競争が激しいことは事実でしょう。
どんなコンサルティングでも、お客さんの身になって、お客さんと一緒に真剣に考えて、信頼を得た人だけが生き残っていく、厳しい職業だということです。
具体的には「三つの喜び」が味わえるのはが、この仕事だとおもっている。
一つ目は、限られた時間の中で、クライアントに納得してもらえるような戦略の論理を構築できたときの達成感だ。
二つ目の喜びは、クライアントにコンサルティングの価値を認めてもらえたときに感じることができる。プレゼンテーションの際、自分が作った戦略が相手の心に響いていくのを見るのは実に嬉しいことだ。
三つ目は、提案した戦略をクライアントが実行して、成果が数字として現れてきたときだ。売り上げや利益が上がったり、競合との差を引き離したりしたときには、自分が作った戦略が正しかったことが実感できる喜びがある。
もちろん苦労した分、成功したときの喜びや「やりがい」の大きさはひとしおでしょう。人から心から感謝されるという、お金以上の報酬をもらえることが、コンサルティングという仕事の醍醐味なのです。
読者のコメント集
なんとなく楽そうに聞こえる「コンサルティング」という職業の実態とは?
某CEO氏の話で、今までコンサルの提案に来た全員に「ウチにコンサルティングに入っていただくからにはこの連帯保証人のサインをしていただきたい」と言ってきたが、誰もサインする人はいなかった、だとか。
なんとなく楽そうに聞こえる「コンサルティング」という職業の実態とは?
研究者とそっくりだ。でも違いは二つ。研究者は論文という成果を必ずださなければいけない。そして、報酬がべらぼうに低い。これみるかぎり研究者のほうがコンサルよりキツイ。トップレベルの研究者の場合だけど
なんとなく楽そうに聞こえる「コンサルティング」という職業の実態とは?
稼ぐ元手が「自分の時間」しかないから大変だよね。3年ほど片足突っ込んでた(うち半年両足突っ込んだ)けど一生の仕事にしたいかと言われれば絶対Noだw
なんとなく楽そうに聞こえる「コンサルティング」という職業の実態とは?
大変なのかもしれないけど、結果責任を伴わない楽な業界という印象はぬぐえない。コンサルが普及させた「成果主義」がもたらした弊害とか影響力あるだけに・・・
なんとなく楽そうに聞こえる「コンサルティング」という職業の実態とは?
経営者はじめ専門家相手のコンサルはそりゃきついだろ。ITは元ユーザー相手とかだからなぁ
なんとなく楽そうに聞こえる「コンサルティング」という職業の実態とは?
このロジック土方作業に加えて、客商売要素もたっぷり加わりますことよ
なんとなく楽そうに聞こえる「コンサルティング」という職業の実態とは?
コンサルって意外と辛いんよね。事前の仮説が間違ってたり、基礎知識がなかったら案件取れへんし - なんとなく楽そうに聞こえる「コンサルティング」という職業の実態とは?
なんとなく楽そうに聞こえる「コンサルティング」という職業の実態とは?
コンサルティングが≪楽そう≫って考えがまず無かったよっと。
コメント
ちっとも楽しくない
戦力のやりくりがとにかくしんどくて、
自分の仕事がほとんどできていません。
ホント、毎回「ふりだしに戻る」みたいなのはしんどいです。
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