食料の値段が高騰していることは、誰でも感じていることでしょう。中国などの国々に、穀物輸入で買い負けるケースが増えています。世界の人口が増加して、食物の争奪戦が始まっているのです。
食糧生産量を増やすには、農地を拡大する必要があります。しかし、これ以上の自然破壊は、地球に大きなダメージを与えかねません。
農地を増やさず、害虫や雑草から守り、効率よく安く収穫量を増やす。そんな夢の様な技術が実用化されています。その技術とは?
遺伝子組み換え作物(GM作物)です。
しかし、GM作物と聞くと、不安を感じる人がほとんどだと思います。GM作物に対する漠然とした疑念は、日本だけでなく、世界共通です。
日本のスーパーなどでも、今後はGM作物が増えていく可能性があります。怖がるだけでなく、GM作物についてよく知ることで、値段が高騰した食べ物を無理に購入する必要がなくなります。正しい知識は、家計の節約につながるでしょう。
我々はすでにGM作物を食べている
GM作物は、実は我々はすでに食べています。日本国内の食用油の原料や家畜の餌は、GM作物です。これらは表示義務がありません。なぜなら、油も肉も、GM作物が利用されていることを調べる方法がないからです。検査できないのです。
同じ遺伝子組み換え技術を利用した、iPS細胞については、GM作物のようなバッシングはありません。iPS細胞は日々の生活には直接影響しないからでしょう。食べ物は毎日のことなので切実です。でも、命をつなぐという意味では、同じことのような気がします。
そう考えると、GM作物に対する我々消費者の姿勢は、論理性を欠いているところがあることは、認めざるを得ません。しかし、人は論理ではわかっていても、感情で動く生き物です。一度植え付けられた不安や疑念を、払拭するのは難しいです。
世界の食糧不足問題を一気に解決するGM作物
アフリカなどの発展途上国では、人口が増えていて、食糧不足が懸念されています。これまでと同じ農業で食料生産を増やすには、農地を拡大するしかありません。
しかし、農地拡大と比例して、多くの農薬を散布する必要があります。森林伐採は土砂の流出につながり、自然を破壊します。
GM作物ならば、収穫量の性質を付与することで、農地を拡大せずに食物生産量を増やせます。害虫に強い性質を持たせることで、農薬の量を減らし、除草剤に対する耐性を持たせることで、草刈りの手間を減らせます。少人数で大規模な農園を運営できるので、コストが下がり、食物を安く提供できます。
栄養失調の防止のために、ビタミンAを作り出せるGM作物もあります。発展途上国で多い失明の病気を防止できます。
食糧問題の解決には、GM作物の導入が効果的なのです。
GM作物に対する誤解の蔓延
ところが、GM作物に対する世の中の目は厳しいです。日本だけでなく、世界でも同じです。
GM作物に対する不信感は、マスコミによる報道のしかたも大きいと言われています。一部の反対グループの声を拡声した方が、ニュース的に面白いからというところはあったでしょう。
遺伝子組み換えというと、神の領域へ踏み込むようなイメージがあります。しかし、従来から行われてきた品種改良も、遺伝子の組み合わせを変化させることという意味では同じです。
遺伝子組み換え作業は、微生物を介して行います。人間がつくりだした方法ではなく、自然界にずっとあった現象をそのまま利用したものです。
害虫を寄せ付けなくするといっても、作物内に新たな毒素を注入するということではありません。植物には元々雑草や害虫を排除する能力があります。アブラムシへの耐性をつけたGM植物は、ミントとよく似ているそうです。
遺伝子組み換えといっても、自然の摂理を踏襲しているのです。
魅力的なGM作物ならば売れる
農家にとっては、農作業の手間が減って、収量を増やせて収益が上がるというメリットがありますが、消費者にとっては、積極的にGM作物を食べる理由が少ないです。
前述したように、値段が安くなったり、栄養面の強化や、美味しさが向上するといった魅力がないと、GM作物を選ぶ必要はありません。
いくら科学的に問題ないといっても、GM作物を非GM作物と区別せずに売るのは、いささか乱暴のように感じます。遺伝子組み換え作物なのであれば、明確に表示をすべきです。
たとえば、日本酒も、お米だけで作られた純米酒と、醸造アルコールが別途添加されている本醸造などのお酒は、種類が分けられていて、内容物が明示されています。
では、純米酒ばかりを飲むかというと、そうでもないです。純米酒は生産に手間がかかるので、値段が高くなります。高いと思えば、本醸造を選ぶこともあります。
GM作物も、消費者が選択できるようにしておくことが必要です。
GM作物に対する誤解を嘆く関係者の声が多いですが、本質はそこではありません。非GMと同じものを作るだけでは、GM作物を選ぶ理由にはなりません。GM作物の開発や、農家さんの努力が足りないということです。
GM技術を駆使して、もっと魅力的な作物を作れば、必ず消費者は買ってくれるはずです。
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これまで、遺伝子組み換え作物について、漠然とした不安を持っていました。今回、書籍「誤解だらけの遺伝子組み換え作物」を読んで、GM作物に対する不安はだいぶ減りました。
遺伝子組み換え技術をうまく利用した、商品価値の高い作物が生まれることを期待しています。
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