2008Jリーグは、開幕スタートに成功した鹿島アントラーズが、中盤もたついたものの、後半に安定した強さをみせ、昨年に続く二連覇を達成した。
それに対し、昨年アジアチャンピオンズリーグを制した浦和レッズは、後半に入り失速。最終戦はマリノスに1-6で敗れるという目も当てられない状況。
同じ赤いユニフォーム同士で、対称的な結果となった。
その辺を糸口に、日本サッカーの現状について、素人意見を述べてみる。
上位チームはプレス志向
優勝したアントラーズをはじめ、2位の川崎フロンターレ、3位の名古屋グランパスは前線からのプレスを身上とするチーム。ディフェンス志向の大分トリニータ(3位)、浦和レッズ(7位)は最後まで勝ちきれなかった。
今のJリーグを勝ち上がるには、自ら仕掛けるアクティブサッカーを実践する必要があるということだ。
鹿島はカミソリのようなチーム
鹿島の試合を観ていると、ボールのおさまりは悪いし、サイドで選手が孤立したりして、なんでこのチームが強いのだろうと思うときがある。
しかしこのチームは、点を取るときの形はとてつもなくすばらしい。
私が考えるに、鹿島アントラーズは、各選手同士が、常に「ベスト」のプレーを連続させようとしているのだと思う。
よって、足元への簡単なパスではなく、敵陣を崩すギリギリのパスや、飛び込みが多くなる。それらが全て成功するわけではないため、なんとなくドタバタした感がでるのだ。
相手にボールを奪われても、お家芸の攻守の切り替えの早さで、高い位置でボールを奪取し、再び高いレベルのプレーを繰り返す。
プレーの見た目は悪くても、なぜか点は入るし、点を取られない。
そんな、素手でカミソリを研ぎ続けるようなプレースタイルは、一朝一夕でものにできるはずはない。Jリーグ発足当初からジーコらが地道に築き上げてきた、鹿島の「無形の力」を感じる。
浦和が強いのではなく、周りが下手だった
以前にも述べたように、浦和レッズは最高の選手を集め、最高につまらない試合をするチームだ。あれほどのメンバーを揃えながら、本当にもったいないと思う。
いまや時代遅れといわれる3-4-1-2のシステム。両サイドはバックラインに吸収され5バックになり、自らプレスはかけずがっちり守って、ボールを奪取したらすかさず、前線の外国人選手に預け、彼らの決定力で勝負する。Jリーグ発足当初から変わらないレッズの「型」だ。
それでも、去年までの浦和はそれで勝てていた。相手のプレスを受け止め、それを個々の力で跳ね返せていた。しかし、今年はことごとく切り崩されている。一体、何が変わったのか?
そう、相手が上手くなっているのだ。
ここ数年、各チームは、世界のサッカーの流行である、「前からプレスを仕掛け、そのまま攻めに転じる」アクションサッカーを戦術に取り入れてきた。この戦術は体力を消耗する上、失敗すると致命的な逆襲をくらいやすい。
各チームはリスクをかけて、浦和に挑んでいた。しかし、そう簡単に新しい戦術を使いこなせるわけはなく、自らのミスからピンチを招くことが多かった。浦和は得意のリアクションで、そうした相手のミスを突き、勝ち星を積み上げてきたのだ。
しかし、ここにきて、各チームのサッカー戦術が成熟してきた。
ガチガチに守る浦和の弱点であるサイドを、流動的な攻撃で猛襲し、ディフェンスラインを何度も崩壊させた。
業を煮やした闘莉王が、片道燃料で捨て身の攻撃を仕掛けるも、自分が抜けた空いたスペースに敵FWが殺到し、逆襲を食らう。
旧日本海軍の大艦巨砲主義のなれはてに、終戦直前に敵戦闘機に蜂の巣にされて撃沈した、戦艦大和の姿と、今の浦和の姿がかぶってしまうのは、私だけか?
日本代表がレベルアップ
浦和はイマイチだけど、他のチームが確実に実力をつけている影響か、最近の日本代表チームのレベルが上がっているように見える。
先日のカタール戦は、前線からのプレスが効いていた。個々のテクニックを駆使して、相手を一度自分の懐に入らせてから、寸前でヒラヒラとかわすプレーが痛快だった。
数年前に高校サッカー選手権を制した野洲高校が、鹿児島実業を相手に見せつけた、「セクシーフットボール」を思い出した。
相手のレベルが上がれば、同じようなプレーはできないだろう。そうなれば、もっと選手個人のレベルを上げるだけである。とにかく、目指す形がなくては、次の世代を担う子供達は練習のしようがない。
日本人の国民性が認める、日本のサッカーの形が、ようやく見えてきた気がする。
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