スポーツというと、結局のところは身体能力にまかせて、選手が頑張れば結果がついてくるようなイメージがありました。
しかし、野村克也氏は、組織としての戦術を徹底的に考えて試合に臨んでいました。その内容は企業の組織論にも通じる、本質的なものでした。
2005年発刊の古い書籍ですが、野村氏の思考が凝縮された名著です。久しぶりに復読して、スポーツこそ思考力や組織力が重要だなと改めて感じました。特に印象に残ったポイントをメモします。
指導者の仕事は人作り
野球はチームでプレーなので、組織力が鍵になります。組織で試合に臨む以上、選手一人一人が、チームの勝利のために考えてプレーする必要があります。
しかし、自分勝手というか、周りとの関係性をよく考えずに行動してしまう選手が居ると、チームの組織力が落ちてしまいます。監督や指導者は、各選手のプレーの技術力を向上させると共に、組織の中でしっかり動けるための「人間力」も鍛える必要があるのです。
とはいえ、野村氏は「エースと四番は作れない」と、指導の限界について語っています。四番とエースは野球チームの鑑であり、生まれ持った資質で決まるとのこと。
組織の中心として活躍できる人材を見抜いて、リーダーとして登用する。居なければ、他のチームから引っ張ってでも連れてくる。リーダーなき組織は機能しないのです。会社組織でも同じようなことが言えそうです。
スポーツこそ思考が重要
スポーツというと、身体能力がものを言う部分は確かにあります。しかし、ただ体力まかせにプレーをしているだけでは、成長は限定的です。
自分の技術を言語化しつつ、根拠を見つめ直すことを繰り返すことで、技術は蓄積していくのだと思います。感覚だけに頼ると、調子が悪くなったときに、何をどう直せば良いのかがわからなくなります。
野村氏は、プレーのノウハウや戦術を考えるだけでなく、それらを言語化することで、チームの方向性を熟知させることができる指導者です。自分で色々考えたり、試行錯誤した経験が無いと、指導者になっても指導ができません。
イチロー選手のインタビューなどを聞いていても、自分のバッティングを言語化しているように感じます。もちろん身体能力も際立って高く、その上に思考を重ねることで、4,000本安打という偉業を達成できたのでしょう。
無形の力
ゲームプランには2種類あります。チームにいる選手を組み合わせて、一番パフォーマンスが向上する戦術を考えるか、逆にチームの戦術に合わせて選手を揃えるかです。
理想的には後者の方法を取るべきでしょう。チームに脈々と流れる伝統の戦術に合った選手を計画的に獲得していく方が、ファンに長く愛されるチームになるでしょう。
チームとしての方向が定まっていれば、怪我などで中心メンバーが入れ替わっても戦えます。チーム全員がやるべき事を理解しているからです。それがチームカラーとなり、目に見えない「無形の力」になるのです。
V9時代のジャイアンツには、強力な「無形の力」があったそうです。サッカーだとバルセロナ、Jリーグだと鹿島アントラーズにも無形の力を感じます。チームの戦略が一貫していて、常に上位争いに絡んでいます。
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